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2013.08.09

ふたつの別れ

「Aさん、また来ますね。」

(笑顔で手をふって、でもどこか寂しげに)
「はーい」

それが最期の会話になるなんて…。

Aさんは魚釣りがお好きで、2~3年前までは友人と誘い合わせて船に乗っては
大物を釣って帰っていたそうです。私が興味津々でお聞きするたびに、
懐かしそうにお話をしてくださるのです。

「元気になってまた出かけましょう」
「そうやね」

お会いして間もない私が勇気づけるものだから、きっとそれにつき合ってくださったのでしょう。
もう、残された命は幾ばくもないと感じながら…。



入院中のBさんは、根っからの人懐っこさで病棟ではスタッフの方から愛されています。
江戸っ子で気性は少々荒く、お見舞いに伺うと病院の対応についての不満が
一つ二つ大きな声で響き渡るのですが、どこか憎めないのです。

デイサービスに来られていた時のこと。
「お兄ちゃん(息子様)のことが心配でね、私がいないと困っていないかな?」

初めのうちはちょっとデイサービスが肌に合わないのか、早く帰りたい口実なのかな?と思っていました。
ところが、入院中に訪ねた時にも、少し寂しそうに同じようなことを仰いました。
そのとき、心から息子様のことを気遣っておられたことがわかりました。

「Bさん、ごめんなさい」と心の中で謝りながら、早く自宅に戻れるように祈る気持ちでした。
しかし、病状は快復しませんでした。
息子様のお気持ちが度重なる面会で少しでも通じたのでしょうか。最期はホッとしたような安らかなお顔でした。



人の死をすんなりと受け入れることは、とても難しいことです。
この仕事をしていて、つくづくそう思います。
でも、そこから生きることを教えられるのも事実です。

Aさん、Bさん、本当にありがとうございました。

bara.jpg
by Tama

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